ふと顔を上げると、部屋の中はすっかり暗くなっていた。
どれくらい時間が経ったのだろう。
私は・・・泣いていた。
泣いて、泣いて、泣いて、泣いて。
自分の身体中の水分が出ていったのではないかと思うくらいに。
顔に付いた涙の跡を擦った。
もう涙も枯れて出てこない。
今日は・・・一体何があったのだろう。
朝、いつものように家を出て、
なおくんといっしょに学校に行って、
いつものように保健室に行って、
美琴から祐介くんが本当の弟じゃないって聞いて・・・
あの、いや5年前の記憶が甦ってきて。
恭子先生と野乃原先生といろいろ話をして。
なおくんと2人でいっしょに帰って。
それから・・・
それから・・・・・・
なおくんが、私を忘れないように・・・
忘れてしまわないように、繋がって。
そして、最後に長いキスをして。
なおくんは私を家まで送ってくれた。
家の門の前で、繋いでいた手をそっと離して。
少しずつ、ちょっとずつ遠ざかっていくなおくんを見ていた。
ずっと、ずっと、見えなくなるまで。
でもそれよりも先に、なおくんの姿は歪んで何も見えなくなった。
大粒の雫が道路にぽたっ、ぽたっと落ちた。
それからどうやって部屋まで辿り着いたのだろう。
何も考えられなかった。
制服のまま、ベッドに飛び込んだ。
なおくん・・・
なおくん・・・・っ。
どうしてなおくんはそんなに強いの?
きっと明日、なおくんは転送装置に入るだろう。
なおくんのことだもの、きっと受け入れるに決まっている。
それなのに、私は・・・
いなくなってしまうかもしれないと思うと、
行ってほしくないと思う自分がいる。
元のなおくんに戻ってほしい気持ちと、
またなおくんを見失うことへの不安が入り混じって、ごちゃごちゃだ。
ふと、5年前の記憶を思い出す。
光の柱の中に吸い込まれていったなおくん。
手を伸ばして、それでもあとちょっとのところで掴めなくて。
まばゆい光に包まれて、私の目の前から消えていった。
・・・また繰り返すの?
・・・またなおくんは私の前から消えてしまうの?
こんなのって・・・やだよ。
2度も最愛の人を見失うなんてできない。
私・・・そんなに強くないよ!
お願い・・・
お願い、私を置いて行かないで・・・
私はもっと、ずっとなおくんの側にいたいのに。
ただ、それだけなのに。
ゆっくりとベッドから起き上がる。
泣き疲れた体が、とても重く感じる。
窓の向こうには近所の家の明かりが見えた。
その向こうには綺麗な星空が広がっていた。
ガラスに手をあて、少しだけ窓を開けた。
すーっと、秋風が流れ込んできた。
顔に冷たい空気が触れる。
ふと、星空に目をやる。
数え切れないほどに、星たちが輝きを競っていた。
私はその星空に祈りを捧げた。
「神様」
「どうか、なおくんを助けて下さい」
「私からなおくんを奪わないで・・・」
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