あなたと一緒なら、きっと大丈夫────。

会ったことなんてないはずの人の、どこか懐かしいような声。

生まれてからずっと、それよりもっと前、ずっとずっと前から、空を見上げればそこにあって、

ネオンの街を、雪原を、さざ波が立つ海を、木々が生い茂る山を、

優しく、冷たく、静かに、明るく、朧に、照らしていた月。

歴史の教科書によると、そこに、大昔に渡った人たちが国を作ったらしい。

地球上のどこよりも遠いのに、見上げればそこにある王国。

そんな国から。

お姫さまが、

うちに、

ホームステイしに来るって言ったらどうする?

どこか懐かしいような声で、会ったことなんてないはずの人が言う。

私には、あなたがいるわ────。
















「あー、寒いっ」

春と言うにはちょっと早いくらい、気がつくと3月の夜空をぼんやりと眺めていた。

「月か・・・・あそこから来たんだよな」







フィーナが朝霧家にホームステイしてから3年。

あれから満弦ヶ崎大学に無事進学してなんとか大学生活を送っている。

大学生活もこの学年は1番中弛みする時期なんだけど、そうでもない。

それは、麻衣が追っかけて大学に入ってきたから。

・・・そう、あの日から俺は麻衣と正真正銘の「恋人」になった。

まだ全ての人が俺達を受け入れてくれたわけじゃないんだろうけど、

それでも、祝福してくれる人がいたこと、応援してくれる人がいたことが嬉しかった。

だから俺も麻衣も今の状況で十分満足している。

でもさすがにキャンパス内でもいちゃいちゃされるのは気にしちゃうけど。

まあこれまで「兄妹」だった分、手をつなぐこともできなかったから、仕方ないかも知れないけど。














「フィーナ・・・・どうしてるかな」

つい、口にしてしまってあっ、と思う。

もう随分たったのに、未だに残るこの気持ちってなんなんだろう。

「ひょっとして、俺まだフィーナのこと・・・・」

いかんいかん。何を考えてるんだ。

そもそも、こんなこと麻衣にでも聞かれたら・・・

「何してるの、お兄ちゃん?」

思わず咳き込んでしまう。

「ま、麻衣!?」

「ど、どうしたの?声が裏返ってるけど?」

「な、なんでもないよ」

「ふーん」

麻衣は何か言いたげな顔をしていたが、すぐに元の顔に戻って

「お風呂沸いたけど、先に入っちゃう?」

「いや、あとにするよ」

と、とりあえず遠慮しておく。

こだわりって程じゃないけど、全員が入浴を終えた後でゆっくりと湯船に浸かる。

疲れを癒すにはこれが一番だ。

「・・・・・そ、それとも、一緒に、入ろっか?」

・・・・え?

思わずティーカップを落とそうになる。

「麻衣、それって・・・」

そう言いかけると、麻衣は

「えへへっ、おにーちゃんのえっちー」

1階へ駆け下りていった。

「あ・・・」

おちょくられたかも。













でも、最近になってフィーナのことを考えるようになったのはそれ以外にも理由があった。

それは、予てからの懸案事項であった、地球と月王国との交流が拡大されたこと。

これまでもいろいろな人々がこの問題に取り組んできた(と思う)けど、実現は難しかった。

しかし、3年前のフィーナのホームステイによって状況は一変した。

議会の場でフィーナが地球と月王国の交流の必要性を唱えたらしい。

まあ、もっともゴシップ記事の情報だから本当かどうかは分からないけど。

それと、この街のシンボルともなっている、物見の丘公園のモニュメント。

あれはこの交流に必要な巨大な移動装置だったそうだ。

まだ本格的な稼動には入ってないみたいだけど、周辺の整備も終了し、

この春から物資とか、限定的だけど運用も始まるらしい。

もちろんその後は一般の市民でも月へ行くことができるようになるらしい。

そうなればフィーナのところへみんなで行けるんだけど。

・・・あ、でもそんな簡単に会える程の身分じゃないけど。













「ただいま〜」

今日は大学が早めに終わったので、まだ家には誰もいないようだ。

せっかく時間もあるし、たまにはイタリアンズの散歩に行くか。

庭に出ると、ふとポストの郵便物が目に入った。

先に家に置いてからにするか。

どさっ、どさっ

ポストを開けるとダイレクトメールとか、近所のピザ屋のチラシとかいろいろ入っていた。

1日でこんなに溜まるんだっけ・・・?

その中に俺あての封筒もあった。

あて先は・・・・・・アルケミスト?

聞いたことない会社だな。

ちょっと中を見てみるか。

中にはゲームのチラシと白いチラシが。



「フィ、フィーナ!?」

思わず出た自分の声に驚いてあわてて口を押さえる。

『等身大のフィーナ姫がニーソ残しで裸ティアラ!?』
『地球・スフィア王国交流拡大記念!アルケミストからヒミツの贈り物』
『今回は等身大(160cm×50cm)ということもあり、みなさまにより満足していただける
出来に仕上がっております。この機会にぜひお求め下さい!』

「こ、これは・・・・趣味の世界だねえ・・・」 ※それは別の作品です。

天からの贈り物か、はたまた地獄への案内状か。

貯金はそれなりにあるから(本当は家のためだけど)買えないことはないけど。

いや、それよりも麻衣とかさやかさんに見つかったら言い訳できない・・・

で、でもフィーナのこんな姿もちょっと拝んでみたいし。

ホームステイで朝霧家にいたころのフィーナを重なって、

ふと我に返ると、庭先で真っ赤っかで立ち尽くす自分がいた。

と、とにかく後で考えよう。

玄関に入って手紙類を置くと、その手紙だけ自分の部屋の机に隠した。













「それじゃ、行ってきまーす」

「行ってきます」

麻衣とさやかさんを見送ると、俺はリビングのソファに腰かけた。

テレビのワイドショーを見ながら、ふうっと息をつく。

「今日、休講でよかった・・・・」



・・・・結局、抱き枕を買ってしまった。

後悔はしてない(笑)

この前届いたメールによると、宅急便で今日、来るらしい。

どう受け取ればいいのか、いろいろ迷ったけど、幸い今日は平日。

麻衣は大学だし、さやかさんは王国関係の仕事とかで、遅くなるらしい。

こっちにしてみれば好都合だ。

お金を確認して、リビングの机の上に置いておく。

「・・・なかなか来ないなあ」

いつもは郵便とか、宅急便とか待ったことがないからどうしていいか分からない。

しかも、物が物だけに・・・・・ちょっと緊張してきた。

あ〜っ、こういうときこそ、平常心。

落ち着いて宅急便が来るのを待とう。













それから、しばらくして。

ぴんぽ〜ん

玄関のチャイムが鳴った。

いっ、いよいよ来たのか!?

お金を握り締めて玄関へ急ぐ。

「はい、開いてますよ〜どうぞ」

そして扉が開いたそこには、見覚えのある人物が立っていた。

「久しぶりね、達哉」

「達哉さん、お久しぶりですっ」

「フィ、フィーナ!?それにミアも!?」

宅急便の兄ちゃんではなく、フィーナとミアが立っていた。

それにしても、なぜここに?いや、それよりもいろんなものが頭を駆け巡る。

「きょ、今日は、どうしてここへ?月に戻ったんじゃ・・・」

「地球で交流を祝うイベントが行われるので昨日の定期船で来たのよ」

「ちょっと時間があったから、ここへ寄ることにしたの」

「連絡もなしていきなりだったから、誰にも会えないかと思ったのだけれど」

「最初に達哉に会えることができて嬉しいわ」

「はい、私も嬉しいです!みなさんもお変わりありませんか?」

「あ、ああ、なんとかやってるよ・・・はは」

なんとか見抜かれないように、笑顔を作ろうとするが、余計に不自然になる。

「達哉さん、なんでお金を握ってるんですか?」

ふと気付くと、宅急便と思ってたのでお金を手に握ったまんまだった。

「随分たくさん持っているようだけれど?」

「こ、これは今からコンビニに行こうかと思って」

「コンビニってそんなにお金が必要なんですか?」

「いや、携帯電話のお金を振込もうかと思って」

「随分使っているのね・・・」

「あまり使いすぎるとさやかさんに怒られますよ」

「そ、そうだね、気をつけないとね」

う・・・・なんとかごまかせたかな。

しかし、その2人の奥から更に人影がやってきた。

「麻衣、さやかさん!?」

声が裏返りそうになった。

「へへ〜私も今日は休講になっちゃった」

「今日は王国からフィーナ姫をお迎えするために大使館に行ってきたの」

「サプライズゲストの感想はどう?」

こ、これは・・・・・・・・・・完璧にマズい。

今ここで、宅急便が来たら・・・・・

「お兄ちゃん、どうしたの?顔色が良くないけど」

「あら、風邪かしら?」

「達哉さん、大丈夫ですか?」

「いきなりお邪魔したのが悪かったかしら?」

「い、いや、そんなことないよ!と、とにかく上がってよ」

とりあえずは、玄関から遠ざけないと。













「フィーナさん、新発売のアイスが買ってあるので食べて下さい〜」

「姫様、今日はせっかくなので静岡茶にしてみましたっ」

麻衣とミアがリビングにアイスとお茶を持ってきてくれた。

ちょっと変な組み合わせだけど。

2人が腰掛けると、早速みやげ話が始まった。

・・・・・・・・。

以前フィーナ達がホームステイしていたころみたいに、リビングは賑やかになった。

フィーナはホームステイから帰った後の、王国での話をしてくれた。

麻衣はもちろん、さやかさんもこくこくと頷きながら聞いている。

もちろん、俺も聞いてないわけじゃないけど、

時計(宅急便)が気になって仕方がない。

「お兄ちゃん、早く食べないとアイス溶けちゃうよ?」

「やっぱり、お茶とは合いませんでしたか?」

「い、いや、そんなことはないよ」

ちょっと溶けかけたアイスを口にほおばる。

「達哉、何かあったのかしら?」

「大丈夫、大丈夫だよ」

「そう・・・」

フィーナは何か言いたそうだったけど、それ以上は言わなかった。

フィーナには見抜かれてそうで、怖いな・・・・

なんとか一呼吸置いたとき、

ピンポーン。

「宅急便でーす、ハンコお願いします」

き、来た!

しかもこんな勢揃いな状況で!!

「はーい、今行きまーす」

麻衣が立ち上がって、玄関へ向かおうとする。

や、やばい!

なんとかしないと!

「あ、俺が行くよ!麻衣」

慌てて立ち上がったので足がもつれたままリビングのドアをつかむ。

「わああっ!い、いいの、お兄ちゃん?」

「いいからいいから」

なんとか麻衣をリビングに押し込んでドアを開ける。

「あー、すいません、こちらにハンコをお願いします。」

ぽんっ。

「はい、どうもありがとうございました〜」

ふぅーっ。

な、なんとか受け取りはうまくいった。





こ、これが、夢にまで見たあの抱き枕なのか!?

そのとき。

がちゃ、とリビングのドアが開いた。

「お兄ちゃん、何が届いたの?」

麻衣が顔を出していた。

「・・・・・それ、何?」

今まで見たことのないような大きな荷物に興味深々のようだ。

こ、ここはっ!

「朝霧麻衣くん、君は重大な病気に侵されている」

「お兄ちゃん?」

「それはきっとアイスクリームの無謀な摂取によるものなのだ」

「お兄ちゃん?」

「だが心配ない、俺がその病んだ心を回復する呪文を授けよう」

「お兄ちゃん?」

「ワンアイスクリーム、トゥーアイスクリーム、スリーアイスクリーム」

びしぃっっ!

「わああっ!!」

へなへなとなる麻衣。

なんとかなった。

あとは、これを自分の部屋へ持ち込むだけ・・・・っと。





「・・・・・みんなに隠し事、良くない」

「だから、破壊する」

「・・・・え?」

次の瞬間。

びりびりつ!

ぼこぼこっ!

ダンボールが宙を舞ったかと思うと、バラバラに砕け散った。

そして、その中から・・・








『・・・・・・・・・』

数秒の静寂。

そして、

「お、お兄ちゃん・・・」

「た、達哉くん・・・」

「た、達哉さん・・・」

「達哉・・・」

そして背後に現れた小さい女の子。

リースだった。

「達哉、ぶざま」

『これは何ー!?』

朝霧家に5人の声が響いた。

「お兄ちゃんのヘンタイー!もう知らないっ!」

「わ、私はいつも達哉くんの味方よ。で、でもこれは、どうかしらって思うの」

「わ、私も達哉さんのこと信じてますっ」

麻衣、さやかさん、ミアが次々に襲いかかる。

そしてその奥からフィーナの青、美しい瑠璃色のオーラが見えた。





「・・・・・これは何かしら?」





その声は、かすかに震えていたのをかすかに覚えている。

そしてその後は・・・・覚えていない(苦笑)





















人類が増えすぎた人口を月に移民させるようになって、既に半世紀が過ぎていた

月面の巨大な人工都市は人類の第2の故郷となり、

人々はそこで子を産み、育て、そして死んでいった・・・・・・

宇宙世紀0079、

豊かの海に存在する月面都市サイド3はスフィア王国を名乗り、

地球連邦政府に独立戦争を挑んできた

この戦いで、王国と連邦軍は総人口の半分を死に至らしめ、文明も後退した

人々は、自らの行為に恐怖した・・・・・・









それから数十年後、

スフィア王国、フィーナ・ファム・アーシュライト女王。

世話係 ミア、フィアンセ 朝霧麻衣、一家の大黒柱 穂積さやか、居候だったリース。

俺のかけがえのない人々と、アルケミスト製”フィーナ姫ふにふに特大抱き枕”に囲まれて

俺は、自らの行為に恐怖した・・・・・・








































・・・・・・・・お楽しみ頂けましたでしょうか(苦笑)

もうごっちゃごっちゃでネタ詰め込みました。

そして私は今夜フィーナとあけるりします♪

Home
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送