2月3日、今日は節分の日だ。
例に漏れず、朝霧家でも節分の行事が行われていた。
リビングにみんなが集まり、皆無言で恵方巻に食いつく。
既にメインイベントである豆まきは終了し、外にはリビングを寂しそうに見つめる仁さんがいた。
「・・・・・んっ、はあーっ、みんな食べ終わった?」
「ええ、終わったわ」
「ごちそうさまでしたー。こんなに大きい太巻きを食べるのは初めてです」
「昔は一部の地域だけの風習だったけど、今では広く知れ渡っているのよ」
軽い説明を加えつつ、リビングにいるみんなにさやかがお茶を配る。
「これは?」
「あ、フィーナさん、これは「福豆」っていうんだよ」
「どうやって食べるのかしら?」
麻衣が身を乗り出すように福豆の袋を掴むと、皿の上にざーっと広げた。
「ここから自分の歳に1つ足した数の豆を食べると、体が丈夫になって風邪とか
ひかなくなるって言われてるんだよ」
「自分の歳・・・・・」
フィーナはそうつぶやくと、皿の上の豆をじーっと見つめている。
「フィーナ、俺が取ってやろうか?」
「え、ええありがとう。自分で頂くわ」
「そうか、そうか。それじゃあさやかさ・・」
「自分で取ります」
視線で圧倒された。
「・・・・・ご、ごめん・・・」
「達哉、女性に年齢を聞いているようなものよ。ちょっとデリカシーに欠けるわね」
そうこうしているうちにみんな歳の数だけ豆を取ったようだ。
「いただきまーす」
「もぐもぐもぐ・・・香ばしくておいしいわ」
「でもなんかちょっとこれだけだと、物足りないね」
「もうちょっとだけ、食べたくなりますね」
「まだ皿に残ってるし、いいよね?」
「麻衣ちゃん、あんまり寝る前に食べ過ぎちゃだめよ」
「はーい」
「じゃ、俺はフィーナのマメでもいただこうかな」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「達哉、なんてデリカシーのない」
「ごめんなさい」
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