「はぁーっ、暑いわね・・・・」
昼下がり、いつものように生徒会室で作業をしていると瑛里華が突然切り出した。
春ではあるが、このところ急激に温度が上昇したからだろうか。
窓から木々の緑を見ているのは気持ちいいが体がそうはいかない。
吸血鬼でも温度変化には弱いようだ。
「ちょっと気分転換でもしたどうだ?」
「そうね、あんまり根を詰めても仕方ないわね」
「私、お茶を入れてきます」
白が給湯室に走っていった。
「あんまりいいアイデアがないのか?」
「うーん、この前の委員会でもあんまりいいのが出なかったのよね・・・」
思案顔の瑛里華。
「この辺で余興とか入れると盛り上がるんじゃないか?」
「でも誰か呼ぶほどの予算があるわけでもないしね」
しばらく考え込んでいた瑛里華はふっと思いついたように顔を上げた。
瞬間、目が合う。
「そうだ。孝平ちょっとネタとかやってみせてよ」
「え?なんで俺が?」
「こういう時は言い出した人が率先してやってみるものよ」
「わああっ、孝平さんの見てみたいです」
お茶を持ってきた白もその意見に乗ってきた。
「ほら、白もこう言ってるんだから。早く吟じなさい」
「って、もうやる内容決まってるし!しかもエロ詩吟かよ!」
「いいじゃない、このゲームも18禁なんだから、今更恥ずかしがることはないわ」
「瑛里華は何かないのか?」
「そんな・・・流行に敏感なわけじゃないし、TVもそんなに見ないもの」
「白ちゃんは?」
「わ、わたしも家ではそういう番組は見ることがないので・・・」
まああの家じゃお笑い番組を見ているというイメージはなさそうだが。
にしても、このままでは問題は解決しない。
と、ガチャっとドアが開いた。
「なんだ、騒々しいの」
「母さまっ!?」
「伽耶さん・・・今日は一体」
「別に用事がないと来てはいけないのか」
「そんな事はないけど・・・」
「じゃ、よかろう」
伽耶は近くの椅子に腰掛けた。
「で、何を騒いでおったのだ」
「いや、今度の学院のイベントについて話してたんですけど」
「なかなかいいアイデアがなくて困ってるところです」
「なんだ、そんなことか」
伽耶はすっと立ち上がると部屋の中央に進んだ。
「お前らに必ず間違いないネタを教えてやろう」
「ちゃんと覚えるのだぞ」
「わあ・・母さま、ありがとうございます」
「私も伽耶さんのこういう姿を見るのは初めてなのでドキドキします」
どんなのが繰り出されるのか分からないが、2人は既に熱い眼差しを送っている。
「では・・・いくぞ」
伽耶さんは両手を高く上に上げると、
「もみじまんじゅう〜!!」
「・・・・・」
「・・・・・」
「母さま、それって・・・」
「なんだ、見たことないのか。最新のネタであろうに」
せっかく披露してやったのに、という表情で3人を睨む。
「仕方ないの、他にもあるぞ」
続くようにまた両手を振りながら、
「何を言う〜!早見優〜!!」
「へんーたいっ!おとうちゃんやめてあげて!!」
「ああ・・・私の母様が・・・」
「そりゃ、何十、何百年を生きているのならそうなるかもな・・・」
その後も延々と夕方まで伽耶さんのオンパレードは続いた。
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